Deeptech Careerの裏側「懇親会での会話が、組織変革の起点に」|塚本 晃章 氏(株式会社センシンロボティクス)
2025.08.28
塚本 晃章 氏(株式会社センシンロボティクス 取締役 副社長)
有限責任監査法人トーマツ、ダイキン工業株式会社を経て、2014年よりそーせいグループ株式会社で経営企画業務に従事。同社投資先のJITSUBO株式会社に転籍を行い代表取締役CFOとして全社経営、資金調達、IPOに向けた管理業務の構築、運用管理に従事。2018年8月よりセンシンロボティクスに参画。無人航空従事者試験1級。
アカリクとPlug and Play Japanは、スタートアップやディープテック領域への理解を深めることを目的に、2022年から年に2回ほどのペースで「Deeptech Career」イベントを共催しています。研究開発型スタートアップを中心に、彼らを支える大手メーカーやベンチャーキャピタル(VC)など多様な立場から、新卒入社一筋の方、転職経験者、起業経験者など、さまざまなキャリアを歩んできた登壇者が参加し、学生や若手研究者に向けたリアルなキャリアの選択肢を紹介してきました。
今回は、2024年5月開催の「Deeptech Career #4【ハードウェアとソフトウェア】研究開発キャリアの交差点」に登壇いただいた株式会社センシンロボティクスの塚本氏に、登壇の背景やイベントを通じて得られた手応えについてお話を伺いました。
若手や大学院生に会社を直接語れる、貴重な機会
― まず、御社の事業内容についてお聞かせください。
塚本:AI、ロボット、IoTなどの最新テクノロジーを活用した社会インフラDXソリューションの提供をおこなっています。領域としては、インフラ点検領域、石油、電力、建設業界等のインフラ点検を高度化することに挑戦をしています。
― 「Deeptech Career #4」への登壇を決めた経緯を教えてください。
塚本:Plug and Playは世界的に著名なベンチャーキャピタル兼アクセラレーターで、メンタリングやプレゼン指導、海外展開のアドバイスなど多方面から支援をいただき、実際に成果も出ていたというご縁がありました。そのため今回大久保さんからイベントへのお誘いをいただいた際には、二つ返事で「ぜひ参加します」とお答えしました。
会社のことを直接語れる良い機会だと感じましたし、専門知識を持つ大学院生や、年齢構成の観点から求めている若手人材に直接アプローチできる機会は非常に良いと思い、参加しました。採用も視野に入れると管掌役員は私となるため、私が登壇しました。
― 実際に参加されてみて、率直な感想を聞かせてください。
塚本:実際に、イベント後の懇親会では学生の方々と直接話すことができましたし、パネルディスカッションでは他の登壇者の方々と知り合うこともできました。そのご縁から、後日会社紹介をし合うなど、交流が生まれました。参加者の皆さんからも様々なご意見をいただき、非常に有意義な機会だったと感じています。
2024年5月24日開催 Deeptech Career #4 に登壇する塚本氏
イベントでの出会いがつなげたインターンと組織の変化
― 当イベントをきっかけに、2026年卒の学生のインターン、さらには新卒採用に繋がったと伺いました。イベント当日の、その方との会話は覚えていますか?
塚本:もちろん、覚えています。懇親会の時に、イベントがどうだったか感想を聞こうと思い、何人かの学生グループに私から話しかけました。その中にその方がいて、会社のことや、パネルディスカッションで聞きたかったことなどについて話していただけました。そこで名刺交換をし、「インターンは募集していますか」と聞かれたと記憶しています。
― すぐにインターン受け入れが決まったのですか?
塚本:実はその当時、私たちはインターンを実施していませんでした。数年前に一度、新卒採用で組織の年齢構成を変えようと試みたのですが、新卒を受け入れるには教育コストや時間がかかるという課題に直面しました。その経験から、当時の会社の状況では新卒採用はまだ早いと判断し、一度トーンダウンしていました。
しかし、Deeptech Careerでその学生さんから「やりたい」という熱意を伝えられ、一度社内に持ち帰り役員に相談しました。受け入れ部署にも快諾してもらえたため、「会社の雰囲気を変えるためにも、やってみよう」ということになりました。
― 実際にインターン生として受け入れてみて、いかがでしたか?
塚本:彼が元々持っていたエンジニアリングのスキルを活かしつつ、私たちから新しいことを学び、楽しんでくれていたと思います。そして、「社会課題をロボットで解決する」という私たちのミッションに共感し、「新卒で入社したい」と言っていただけました。そこからはトントン拍子に話が進みました。
また、今回の受け入れをきっかけに、「インターンを本格的にやってみよう」という話になり、その後、3名の学生をインターン生として受け入れました。
インターン生がいると、指導する側の若手メンバーも、教えることを通じて視座が上がりますし、彼らが会社に来てくれることで、リモートワーク中心の私たちも自然と出社する機会が増えました。インターン生を中心にランチに行ったり、顔を合わせて雑談したりと、社内の雰囲気作りにも繋がり、若手メンバーが入ってくることの良さを実感しました。
2024年5月24日開催 Deeptech Career #4 の懇親会の様子(中央左、3人の学生と話しているのが塚本氏)
新卒採用の覚悟を決め、そこから全てが広がった
― シードからミドルステージのスタートアップにとって、若手人材の採用成功の鍵はどのような点だと思われますか?
塚本:私たちも先輩のスタートアップ経営者に「新卒採用はいつから始めるべきか」とよく聞きますが、明確な答えはありません。色々な人に聞いた結果、結局は「経営陣が『採用する』と覚悟を決めるしかない」という結論に至りました。
そして、覚悟を決めて採用するからには、例えば多忙な部署に新卒を配属して放置するようなことがあってはなりません。それでは採用された新卒社員も不幸ですし、受け入れたマネージャーも疲弊し、会社全体にとってマイナスです。
ですから、役員が率先して「これは会社としてやるべきことだ」という強い意志を全社に浸透させることが、成功の鍵だと考えています。今回、新卒採用を決めた時も、社内で多くの方と議論をし、「この機会を逃してはいけない。このままでは10年後、我々は皆10歳年を取るだけだ」と説得しました。
― 資金調達額や売上規模といった指標よりも、経営陣の覚悟と、それを現場に浸透させる強い意志が重要だということですね。
塚本:はい。例えば「次のラウンドAの資金調達ができたら」「ラウンドBに到達したら」といった目標を設定しても、ビジネスは計画通りには進みません。ピボットもあれば、次々と新しい課題も出てきます。そうなると、計画はズルズルと後ろ倒しになり、いつまで経っても新卒採用は始まりません。そのため、もう「決める」しかないのです。私たちも今回の新卒採用を決め、そこから全てが広がっていきました。
良いことずくめ。参加しない理由はない。
― 最後に、Deeptech Careerに興味を持つ方に向けて、メッセージをお願いします。
塚本:私たちのような未上場のスタートアップの事業内容を知る機会は、普段はほとんどないと思います。社名を検索して調べに来ない限り、情報に触れることはありません。
このイベントでは、キラリと光るようなスタートアップが一堂に会します。そうした企業をまとめて知ることができる機会は、他にはないでしょう。また、他の登壇企業の方と知り合うことができたのと同じように、参加者の学生の方にとっても、同じような志を持つ同年代の仲間と知り合えることは、非常に価値があると思います。
これからキャリアを考えていく上で、同世代の仲間がどのような選択をしたかという話は、自身の判断の参考になるはずです。そうした仲間と出会えることも、このイベントの大きな魅力です。参加費も無料ですし、参加しない理由はないと思います。失うものは何もなく、良いことずくめだと思います。
次回イベントのご案内
・日時: 2025年11月7日(金)17:30-20:00
・場所: 〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-10-8 渋谷道玄坂東急ビル1F
・対象: 研究開発型スタートアップで働くことに興味がある方(大学生、大学院生、ポスドク、社会人等) 。学生の場合、卒業/修了年度は不問です。
・お申し込みはこちらから
Plug and Play x Acaric による起業相談窓口の開設
起業に関心がある、起業を計画している方、スタートアップ/ベンチャーキャピタルに関心がある方向けに、シリコンバレー発のベンチャーキャピタルであるPlug and Play社による相談窓口を設置しました。ご希望される方は下記フォームよりお申し込みください。
◆ インタビューのお相手:塚本 晃章 氏(株式会社センシンロボティクス 取締役 副社長)
◆ 企業情報
社名:株式会社センシンロボティクス
代表者:代表取締役社長 CEO 北村 卓也
本社所在地:〒140-0014 東京都品川区大井一丁目28番1号 住友不動産大井町駅前ビル4階
設立:2015年10月1日
こちらの記事は2025年8月28日に公開しており、記載されている情報が現在と異なる場合がございます。